機密情報が漏れてしまったら「不正競争防止法」

機密情報という「知的財産」が漏れてしまったら、知的財産の不正利用を、罰則によって直接ストップをかけなければなりません。そのための法律が不正競争防止法です。不正競争防止法には、営業秘密(トレードシークレット)の保護が定められています。

万一機密情報が漏れてしまったら、法律に頼るしかない

企業には、多くの機密情報が溢れています。たとえば、メーカーなら製造技術、生産ライン、設計図、販売会社なら顧客名簿、仕入先リスト、ノウハウといったものです。これらの機密情報は企業の生命線ですし、その漏洩は企業の存続さえ危うくしてしまいます。

入社時に機密保持契約を締結し、セキュリティポリシーを策定、運用し、万全の対策をとったにもかかわらず、哀しいかな機密情報は漏れることがあります。もし漏れてしまったら、企業としては、国家権力たる「法律」に頼らざるを得ないのです。
機密情報は、民法や刑法によって保護されています。民法の契約自由の原則に基づき、企業と従業員との間で秘密保持契約が結ばれていたら、企業は情報を漏らした従業員に対して損害賠償を請求できます。

雇用契約で「機密情報を漏らしたら解雇に処する」とあれば、クビを切ることだってできます。競合他社がこの従業員をそそのかして機密情報を不正に取得・使用したら、その競合会社に対して、民法の不法行為によって損害賠償を請求できるでしょう。でも、損害賠償(つまりお金)を請求できるだけで、ほんとうに十分でしょうか。従業員や競合他社に対して「盗んだ機密情報を使うな!」と差し止めることで、損害を最小限にくい止められるのではないでしょうか。刑法や民法では、こういった機密情報の不正な使用を差し止めることはできません。そこで「不正競争防止法」の登場です。

不正使用を差し止め可能な不正轍争防止法

不正競争防止法とは、商標・商号の無断使用、モノマネ商品、営業秘密の不正使用、誹誇中傷といった「事業者間の不公正な競争」を防止するための、わずか14 条の法律です。なかでも、「営業秘密(トレードシークレット)」がクローズアップされています。ポイントは「差し止め可能」という点です。
今までの民法や刑法ではできなかった差し止めが、不正競争防止法の改正によって可能になったのです。
たとえば、従業員や競合他社によって営業上の利益が害される可能性がある場合には、裁判所に差止請求の裁判を起こせます。緊急の場合には、仮処分の申立てによって、不正行為を差し止めることもできます。ただし、営業秘密の保有者が差止請求権を行使するには、不正競争防止法が要求する2 つの条件を満たす必要があります。それが「営業秘密」と「不正行為」です。

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