商標は、自社(製品)に対する信用が具体化した大切な暖簾(のれん)です。ドメイン名と商標の問題は、インターネットビジネスの発展のための重要な課題となっています。
南榎は商品やサービスを選ぶときの目印
消費者が同じような商品を買ったりサービスの提供を受けるとき、選択する際に参考になる目印が「商標(サービスマーク)」です。また商品を製造・販売する企業にとっての商標は、自社と他社商品との差別化、消費者の購入意欲の促進など、売上げを向上させるための信用力となります。
商標法の目的は、企業に育てられた商品(サービス)イメージに対する信用を保護することで、同一の商標を他企業が使用することは認められません。商標は「企業の顔(のれん)」なのです。商標権を取得するには、特許権と同様に、特許庁への出願手続きが必要です。
出願には、商標の使用分野が区分されており、どの区分に出願すべきか検討する必要があります○商標を登録後に使用していなければ、審判で登録が取り消されることもあります。商標は、出願をしても特許庁の厳しい審査をパスしなければ、商標権を取得できません。特許庁の審査にパスすると、登録日から10 年間その商標を独占的に使用することができます(更新も可能です)。
商標とドメイン名の関係
インターネットでは、通信する相手を識別するために、IPアドレスという32ビットで構成される固有の識別番号を使用しますが、この識別番号では相手を特定するのに不便なので、ドメイン名という表記方法あります。
ドメイン名は各国ごとに取得することになっており、日本のjp」がつくドメイン名はJPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)によって割り当てられます。
ドメイン名は早いモノがち
一般に、社名等は商標法や商号によって保護されますが、ドメイン名は商標法上の保護対象にはなりません。自社の社名をドメイン名として申請するのはJPNICに対してなので、特許庁に商標が登録されていても、ドメイン名を他人に取得されるケースは十分あります。
実際に米国では、数多くのドメイン名を登録し、他人に売りっける「ドメイン屋」が横行しています。日本でもmatsuzakaya.co.jp 」というドメイン名がデパートの松坂屋ではなく、まったく別の会社に取得されていたというニュースがありました。あるドメイン名で開設しているホームページが、それを社名とする企業の活動と誤認を起こさせる疑いがある場合は、不正競争防止法(2条1項2号)に抵触する可能性がありますが、商標権の侵害を主張することはできません。ドメイン名を登録する際に登録商標があるかどうかをチェックするよう制度化すべきという意見もありますが、実際問題としてはきわめて困難です。
ロゴマーク
ところで、インターネットではドメイン名ばかりではなく、ホームページ上で使用するロゴマークも問題になります。どちらかといえば、こちらのほうが重要です。他人の登録商標と同一・類似のマークを、自分のホームページ上で同一・類似の商品やサービスに使用することはできません。
これはドメイン名以前の問題で、あくまでも商標法や不正競争防止法の問題です。
商標の国際的な課題
では、特許庁に自分の商標を登録しておけば大丈夫かといえば、そうでもないのが現状です。商標は国ごとに権利を取得することが前提となっています。インターネットには国境はありません。全世界からホームページを見られますから、その商標が日本で登録されていたとしても、外国で登録していなければ商標権侵害の問題が生じるケースがあります。
インターネットを利用できるすべての国で商標調査するというのは、現実問題として不可能です。